ポリオ根絶へ「あと一歩」 明日から私たちにできること
世界には、今なおポリオに苦しむ人々がいます。根絶に向け、EXILEのTETSUYAさんをアンバサダーに、「RECYCLE TO END POLIO」プロジェクトが始まりました。

世界には、今なおポリオに苦しむ人々がいます。根絶に向け、EXILEのTETSUYAさんをアンバサダーに、「RECYCLE TO END POLIO」プロジェクトが始まりました。
5歳以下の子どもの発症が多く、手足のまひや後遺症、ときには死に至る危険もあるーー。
ポリオは、ポリオウイルスが口の中に入り、腸で増えることによって感染する。便に混じって排泄(はいせつ)され、便を介して、感染が広がる。大人も感染することもあるが、乳幼児に多い病気とされる。しかし、ウイルスが脊髄(せきずい)の一部に入り込み、手や足などにまひがあらわれ、一生残ってしまうこともある。
日本では1950~1960年代に流行したが、ワクチンの一斉投与により1980年以降、新規発症は報告されていない。世界保健機関(WHO)や国連児童基金(UNICEF)などが1988年に「世界ポリオ根絶のためのイニシアチブ」(GPEI)を立ち上げて「ポリオ根絶」に取り組み、現在は多くの地域で根絶宣言が出ているが、パキスタンやアフガニスタンといった南西アジアの国で発生が確認されている。
予防に効果があるのはワクチンで、世界全体でポリオの根絶が確認できるまでワクチン接種は必要とされる。だが、根絶ができていない背景には、武装勢力の支配地域で子どもにワクチンを接種する活動が難しいという事情もある。
ポリオ根絶は、5月の主要7カ国(G7)広島サミットの首脳宣言にも盛り込まれている。G7首脳は、2026年までのポリオ撲滅を軌道に乗せるため、GPEIへの継続的な支援を求めた。
ポリオ根絶に取り組むロータリー財団によると、1988年に125カ国で約35万人と推計された患者は大幅に減少し、2022年は3カ国で30人、2023年は2カ国で6人が確認されているという(7月25日現在)。こうした「野生株ウイルス」由来の患者のほか、弱めたウイルスを使った「生ワクチン」が原因でまれにまひ患者が発生することもある。
根絶まで「あと一歩」とされるポリオ。日本に暮らす私たちにできる取り組みはーー。
7月27日、ポリオ根絶に向けたプロジェクト「RECYCLE TO END POLIO」の発表会が東京都内であった。
主催したのは、認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV)」。JCVは1994年から、ワクチンで予防できる感染症で命を落とすことのないよう、開発途上国の子どもたちへのワクチン提供を続けている。
発表会に登壇した剱持睦子理事長は「ポリオ根絶を実現するためには、根絶するために活動を続けることがなにより大切。今回始動するプロジェクトも、一過性のイベントで終わらず、今後継続して活動を進めていきたい」と語った。
「RECYCLE TO END POLIO」プロジェクトは、捨てられてしまうペットボトルのキャップを回収してリサイクルし、その売却益の一部がJCVに寄付され、JCVがUNICEFと連携してポリオワクチンを世界の子どもたちに届けるというもの。
プロジェクトのアンバサダーに就任したのは、人気グループ「EXILE」のメンバー、TETSUYAさん。TETSUYAさんは早稲田大学大学院スポーツ科学研究科でダンス教育について研究し、2021年には厚生労働省の「健康クリエイター」に就任。健康への関心や理解があることなどから、アンバサダーに就いた。TETSUYAさんは「活動を通して多くの方にポリオウイルスを知っていただける機会になれば」と語り、こう訴えた。
「世界ではこのウイルスに苦しむ子どもたちがいます。ポリオワクチンを打つことで感染を防げますが、まだまだワクチンが行き渡っていない国もあると聞きました。日本と世界が一丸となって、全ての子どもたちを守り、誰も取り残さない世界をつくることが重要だなと考えています」
キャップを回収するリサイクルボックスは、7月28日から10月6日までの間、TETSUYAさんの所属事務所「LDH」が主催するライブ会場の一部や、イベント会場などのほか、衆院議員会館にも設置されるという。
リサイクルボックスが近くになくても、指先で参加できる方法もある。
プロジェクトの期間中に、Instagram、Twitter、TikTokで、指定された写真とハッシュタグを投稿することで、1投稿で1人分のポリオワクチンが寄付される取り組みだ。
対象となるのは、「ペットボトルキャップにハートを描いた写真」か、「OKサインをしながらキャップを持った写真」で、「#ENDPOLIO」と「#キャップアクション」の両方のハッシュタグをつけて投稿されたもの。
TETSUYAさんは「現場に来てボックスに入れられない方もたくさんいらっしゃると思うので、全国のみなさんに呼びかけたいです」と語った。
発表会には、「世界の子どもたちのためにポリオ根絶を目指す議員連盟」会長の逢沢一郎衆院議員ら国会議員も出席。逢沢氏は「『もう一歩』のところまできているが、最後の一歩のところで悪戦苦闘している状況がある。野生株もワクチン由来もみんなで根絶をする、とどめをさしたい」とあいさつした。
武井俊輔外務副大臣は「こういった問題は、国民のみなさんにどう関心を持ってもらうか。どうしても国内の問題でないことについてはなかなか関心を持っていただきづらい」と述べた上で、「これが根絶できたら、天然痘以来の世界の公衆衛生の一歩になると確信しています」と語った。