アフリカで増える児童労働、できることは? ACEの岩附由香さん
2025年は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)で世界から児童労働をなくす目標の年。児童労働をなくすためにはどうすればよいのでしょうか。

2025年は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)で世界から児童労働をなくす目標の年。児童労働をなくすためにはどうすればよいのでしょうか。
世界の児童労働は2000年から2016年にかけては減少傾向でしたが、2020年の調査では増加に転じました。日本に暮らす私たちにも無縁ではありません。途上国で児童労働をなくす取り組みをしてきたNGO「ACE(エース)」(東京都台東区)の代表、岩附由香さん(50)が、私たち一人ひとりに何ができるのか、語りました。
児童労働が国際的に注目を集めるようになったきっかけの一つは、1997年に「ナイキ」の製品を作る過程で子どもたちを働かせていると指摘されたことです。世界で不買運動がおき、児童労働が企業や消費者も関わるグローバルな課題として認識されました。
1999年には新しい条約ができ、途上国政府側も、児童労働の存在を否定するのではなく、国際機関などの支援を受けて問題に取り組む方向にかじを切りました。
(国連児童基金と国際労働機関が4年に1度発表している推計によると)世界の児童労働は2000年から2016年にかけては減少傾向でしたが、2020年に増加に転じました。サハラ以南のアフリカで増加傾向が止まらず、ほかの地域の減少幅を超えたためですが、近年、気候変動や紛争など、ほかの地球規模の課題への対応も迫られるなか、増加に歯止めがかかりそうにありません。
アフリカの児童労働のなかでも、義務教育の年齢にあたる15歳未満の子どもの労働が増えています。背景には紛争、貧困、気候変動などがあります。
世界の児童労働者の1億人以上が農業分野に従事しています。ACEが活動するガーナのカカオ生産地でも、気候変動などの影響で生産量が激減しました。そうした影響で困窮度合いが増し、子どもたち自身の生活にも影響を与えます。
日本にも、児童労働は存在します。18歳未満の危険・有害な労働や、特殊詐欺などの犯罪に子どもが使われること、児童ポルノ・性的搾取などが当たります。特にSNSを通じて巻き込まれることも増えています。
子ども自身が「自分のしていることが児童労働に当たる」と認識するのは難しく、「本人の認識がないから児童労働ではない」ということではありません。大人の認識を変える必要があります。
日本では児童労働は「途上国の問題」「必要悪」と言われることもあります。しかし、「ビジネスと人権」の考え方から、サプライチェーンにある児童労働問題についても、企業が人権を尊重する努力を求められる時代です。
日本にいる私たちができることはたくさんあります。こうした課題があることをまず知ること、消費者として、私たちが日々使っているものが実は児童労働とつながっているという現実に向き合い、関心を持ち続け、きちんと取り組んでいることがわかる商品を選んだり、企業に懸念を伝えたりできます。
日本でも多くのNGOが児童労働の解決を目指す活動をしていますので、そうした団体の国際協力に寄付などで参加することも、一つではないでしょうか。
岩附由香(いわつき・ゆか)
米国大学留学からの帰国途中に寄ったメキシコで、物乞いをする子どもと出会い、大阪大学大学院在学中の1997年にACEを設立。国際協力NGOセンター副理事長、児童労働ネットワーク事務局長も務める。