5歳以下の子どもの発症が多く、手足のまひや後遺症、ときには死に至る危険もある病気「ポリオ」。

日本では1950~1960年代に流行したが、ワクチンの一斉投与により1980年以降、新規発症は報告されていない。だが、世界にはまだポリオに苦しむ地域がある。

このポリオの根絶を目指そうと、人気グループ「EXILE」のメンバー、TETSUYAさんをアンバサダーに、7月末に立ち上がったプロジェクト「RECYCLE TO END POLIO」。ペットボトルのキャップを集め、リサイクルによって生まれた収益から、ポリオワクチンを世界の子どもたちに届けることを目指すものだ。このプロジェクトが10月に終了し、このほど集計結果などが発表された。

71日間で23万超のペットボトルキャップ

ポリオ議連のメンバーらにプロジェクトの報告をしたEXILEのTETSUYAさん(右から4人目)=「RECYCLE TO END POLIO」事務局提供

「RECYCLE TO END POLIO」事務局によると、71日間のプロジェクトの期間中に23万9350個のペットボトルキャップが集まった。回収ボックスは、TETSUYAさんの所属する「LDH JAPAN」のオフィスやLDH主催のライブ会場の一部、衆参の議員会館などに設置されていた。このプロジェクトを通じて、5239人分のポリオワクチンが世界の子どもたちに届けられるという。

TETSUYAさんは事務局を通じ、「日常のアクションを通じて社会に貢献できることなど、プロジェクトを通じて学びと発見がたくさんありました」とコメント。キャップを集めた人々に感謝を表明し、「今後も自分にできることをやっていきたいと思います」と語った。

ポリオワクチンは、プロジェクトを主催した認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV)」が国連児童基金(UNICEF)と連携して世界の子どもたちに届けるという。JCVの剱持睦子理事長は「多くの方がポリオやこの活動について知り、参加していただく機会になった」とコメントした。

認定NPO法人「世界の子どもにワクチンを 日本委員会(JCV)」の剱持睦子理事長(左)とEXILEのTETSUYAさん=「RECYCLE TO END POLIO」事務局提供

ポリオとは?

ポリオは、ポリオウイルスが口の中に入り、腸で増えることによって感染する。便に混じって排泄(はいせつ)され、便を介して、感染が広がる。大人も感染することもあるが、乳幼児に多い病気とされる。しかし、ウイルスが脊髄(せきずい)の一部に入り込み、手や足などにまひがあらわれ、一生残ってしまうこともある。

世界保健機関(WHO)やUNICEFなどが1988年に「世界ポリオ根絶のためのイニシアチブ(GPEI)」を立ち上げて「ポリオ根絶」に取り組み、現在は多くの地域で根絶宣言が出ているが、パキスタンやアフガニスタンといった南西アジアの国で発生が確認されている。

予防に効果があるのはワクチンで、世界全体でポリオの根絶が確認できるまでワクチン接種は必要とされる。だが、根絶ができていない背景には、武装勢力の支配地域で子どもにワクチンを接種する活動が難しいという事情もある。

ポリオ根絶に取り組むロータリー財団によると、患者は1988年に125カ国で約35万人と推計されたが、2022年は大幅に減少して3カ国で30人、2023年は2カ国で10人が確認されているという(10月31日現在)。こうした「野生株ウイルス」由来の患者のほか、病原性を弱めたウイルスを使った「生ワクチン」が原因でまれにまひ患者が発生することもある。