グローバルヘルスやジェンダー問題、人権問題や食料不安。世界にも、日本にも、これらの課題を解決すべく活動している人がいます。NGOをはじめとする「現場で働く人」をゲストに迎えるポッドキャスト「地球で働く!」。第4回では第3回に続き、「ARUN Seed」の代表理事、功能聡子さんをお招きしています。ポッドキャスト本編はSpotifyApple Podcastsで配信しています。 

社会起業ってなんだろう? 社会課題の解決に「投資」するってどういうことだろう? 功能さんにそんな素朴な疑問に答えていただきました。記事では本編のごくごく一部を、読みやすいように編集してお届けします。

ARUN Seedファウンダーで代表理事を務める功能聡子さん=4月11日、東京都中央区、編集部撮影

社会的投資はハイリスク?

──ARUN Seedは日本の方から寄付としてお金を集めて、それを国外の社会起業家に投資しています。具体的にどんなプロセスで進めているのか、教えていただけますか?

ちょうど今、ビジネスコンペティションをやっていますが、プロセスとしてはまずARUN Seedが起業家や事業を募集し、起業家からアプリケーション(申し込み)が来ます。今回は、世界30カ国近くの起業家からアプリケーションが来ていて、それをちょうど審査をしているところです(※ ポッドキャスト収録時)。審査のうえで決定した企業に対して投資をしていくわけです。

──審査があるわけですね。

審査をする時には、まず書類審査。それからインタビューをして、さらにピッチ(事業計画の説明)をしてもらいます。外部の審査員の方、専門家の方にご協力いただいて選びます。選ぶ時のポイントとしてまず問われるのは、「事業としてサステイナブル(持続的)に回るビジネスモデルなのか」ということ。さらに、「社会的なインパクト」も問われます。どんな問題を解決しようとしているのか、それに対してどんなインパクトが出せるのか、ということですね。

──なるほど。

ただし、対象となる企業はスタートアップ段階。果たして成功するか失敗するか、未知数です。もちろん起業家は、成功すると思っていますが、事業ってそんなに生易しいものではないですよね。多額の資金を集めるのは難しいですし、安全性を重視する機関であればあるほど投資もしにくいでしょう。

「投資」にはリスクがつきものです。起業家は課題を解決したい、そのための事業をやりたいと思い、その事業に必要な専門性を備え、事業計画を一生懸命考えています。そして、そのアイデアや技術に素晴らしいものを見いだせることもある。ならば、そのリスクを一緒にとろうという行為が「投資」だと思っています。

一緒に事業を作る。一緒にやれる、仲間になれる。それが投資の醍醐味(だいごみ)なのではないでしょうか。

聞き手を務めた大学生、渡邉志保さん=4月11日、東京都中央区、編集部撮影

──「投資」と言うとすぐに「リターン」という言葉がついて回ります。社会起業家に投資する時のリターンをどう考えていますか?

おっしゃる通り、一般的な投資は今まで、リスクとリターンの2軸で判断されてきました。リスクが高ければ高いほどリターンも高く、だからこそお金を出す、という場合もありました。

それに対して、リスクとリターンとインパクトで考えましょう、という新しい考え方があります。三つ目の軸であるインパクトというのが、まさに社会課題の解決にあたります。

インパクトをいかに定量的に測るかが、大事なアジェンダです。一定の指標ではなく複数の指標があるため、インパクトを特定するのは難しい課題です。

ARUN Seedに関連する事業で言うならば、例えば今まで雇用が得られなかった人たち──女性や難民、障害者といったような人たちの雇用をどれほど生み出せたのか、雇用の質がどうなのか、ということで測ることができます。あるいは、自然環境をどれだけ保全できたのか、どれだけ改善できたのかでも測れますよね。(続きはPodcast本編で。Spotify / Apple Podcasts

功能聡子さん

国際基督教大学、ロンドン政治経済大学院卒。民間企業、アジア学院を経て1995年より10年間カンボジアに在住。NGO、JICA、世界銀行などの業務を通して、復興・開発支援に携わる。カンボジア人の社会起業家との出会いからソーシャル・ファイナンスに目を開かれ、その必要性と可能性を確信しARUNを設立。日本発のグローバルな社会的投資プラットフォーム構築を目指して活動している。(ARUN Seedウェブサイトより)