グローバルヘルスやジェンダー問題、人権問題や食料不安。世界にも、日本にも、これらの課題を解決すべく活動している人がいます。NGOをはじめとする「現場で働く人」をゲストに迎えるポッドキャスト「地球で働く!」。第15回では、国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンのアドボカシーグループリーダーである長島美紀さんに、女性や女児のエンパワーメント、リーダーシップ育成、教育機会の確保などについてお話しいただきました。ポッドキャスト本編はApple PodcastSpotifyで配信しています。

「地球で働く!」第15回には、国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンのアドボカシーグループリーダー、長島美紀さんをゲストにお招きしました。

今回の収録には、with Planetの藤谷健シニアエディターとともに、大学3年生の入口侑可さんが参加。生理の貧困問題や医療格差などの課題に関心をもつ入口さんとともに、ジェンダー問題に焦点を当てさまざまなお話を聞きました。

この記事では本編の一部を、読みやすいように編集してお届けします。

プラン・インターナショナル・ジャパンでアドボカシーグループリーダーを務める長島美紀さん=東京都中央区、編集部撮影

共学の大学に進学して抱いた違和感

──長島さんがジェンダーを意識するようになったきっかけを教えてください。

私は小学校から高校までの12年間、女子校に通い、大学受験を経て共学の大学に行きました。大学では、同級生の女性の割合が1割程度しかおらず、いま思い返すと「これってアウトだな」と思うことがありましたし、実際に体験したこともありました。

それらの経験がジェンダー問題に起因すると気づき始めたのは、大学生活が終わるころでした。大学院に進学して、博士論文でもジェンダーの話題を取り上げるようになりました。

──女性が100%だった環境から、共学の大学に通ったというのは大きな変化だったのではないでしょうか。

「女子だけの世界はもういいかな」と思って大学は共学にしたのですが、なかなかそれに慣れない自分に、一番びっくりしました。自分で希望したはずなのになんでこんなに苦労しているんだろう、って。

──大学院まで進む一方で、就職の不安はありませんでしたか。

大学に入るころは、漠然と国連で働きたいと思っていました。でもその後、自分には向いていないと気づき、大学では修士までは行こうと決めていました。修士課程に入ると、男性が多いのはもちろんですが、それだけでなく、修士論文の話をしたときに同級生に「君にはわからないだろうけどね」と言われたんです。

──ええ……。本当ですか。

本当に言われたんですよ。その悔しさで博士課程に進んだというのもあります。ただ、博士に進んでからは、文系だとなれる職業もないし、一般企業への就職の道もないので、リスクが高いなと思いましたね。だから「私、仕事、何をするんだろう」とずっと考えているような〝20代ライフ〟を送ってきたので、いま振り返ると暗黒の時代で。「お先真っ暗」という感じではありました。ただ国際協力に関心があり、修士にいるころから国連やNGOでインターンを経験して、調査をしたりリポートを書いたりはしていたので、自分の適性を考えるきっかけにもなりました。

収録に参加した大学3年生の入口侑可さん=東京都中央区、編集部撮影

国連ではなく、NGOに進んだワケ

──国連に入ることを選択しなかったのはなぜですか。

私は割と自分の仕事のスタイルが「一匹おおかみ」に近いんです。自分で企画して、自分で売り込みに行って、営業してお金を取ってきて、何かをやる。これをずっと繰り返して仕事をしていることもあって、組織で働くには難しいんです。

自分が得意なことは少し違うのではないか。きっちり決まったことをやらないで、むしろ自分がアイデアを出して、そのシーズ(種)を育て、プランニングしていくほうが自分は好きだなと気づいたんです。そうすると、国連をはじめとした行政機関ではなく、NGOでいろいろなテーマの仕事に関われることが自分に向いていると考えました。

──いろいろなことに関心があって関わるようになると、一方でそれらの行動に矛盾が発生することはありませんか。

私はパッチワーク(様々な考えなどを寄せ集めてつなぎ合わせること)が得意なんです。例えば今日はジェンダーの話をしていますが、ジェンダーの問題は貧困、教育、あるいは環境にも密接に関わってくる。気候変動や感染症など、いろいろなところにつなげて語り、解決の糸口を見いだすことができます。私が携わっている仕事の内容は、見え方こそ違うかもしれませんが、自分の中ではそこまでの違いは感じていません。(続きはPodcast本編で。Apple Podcast / Spotify

長島美紀さん

政治学博士。大学院で先進国の難民受け入れ政策を研究する傍ら、難民支援を行う国際機関やNGOにインターン、リサーチャーとして関わる。その後アフリカに関するキャンペーン活動やNGO、財団の運営、政策提言活動などに従事。SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)では、普及啓発事業を担当。現在、認定NPO法人Malaria No More Japan理事、プラン・インターナショナル・ジャパン アドボカシーグループリーダーも務める。著書に「FGM(女性性器損傷)とジェンダーに基づく迫害概念をめぐる諸課題―フェミニズム国際法の視点からの一考察」(早稲田大学出版部)。