グローバルヘルスやジェンダー問題、人権問題や食料不安。世界にも、日本にも、これらの課題を解決すべく活動している人がいます。NGOをはじめとする「現場で働く人」をゲストに迎えるポッドキャスト「地球で働く!」。第13回では、難民支援協会・代表理事の石川えりさんに、日本国内に来た難民を支援することについてお話を聞きました。ポッドキャスト本編はSpotifyApple Podcastで配信しています。

with Planetのポッドキャスト「地球で働く!」の第13回では難民支援協会の石川えりさんをゲストにお招きしました。

高校時代から難民問題に関心を持ち、大学卒業後に難民支援協会の立ち上げに携わった石川さん。今回の収録に参加した大学3年生の石岡紗織さんも人権問題に関心があるとのことで、話題はNGO、NPOだからこそ実現可能な活動は何かを問う内容になりました。この記事では本編の一部を、読みやすいように編集してお届けします。

難民支援協会・代表理事の石川えりさん=東京都中央区、編集部撮影

「どうしても難民支援がしたい」

──難民支援協会を設立したきっかけを教えてください。

国際関係法学科で国際法や人権を勉強していた大学生のころ、国際人権NGOのアムネスティにインターンとして携わっていました。大学卒業を前にした1998年、難民についての専門的な団体を作れないかという話が、アムネスティのスタッフの間で出ていました。

日本で難民申請が増えていた時期でしたね。もちろん今のように1万何千人ではなく、数十人が数百人になるレベルでした。それでもやはり包括的に支援をする団体が必要ではないか、政府と対話を通じて提言できる団体が必要だということで大学を卒業する直前の1999年2月に設立準備会を作り、卒業後の7月に難民支援協会を立ち上げました。

当時、新卒でNGOで働くことを全くイメージしていなくて、NGOにいたので就活もしていなかったら就職活動に苦戦しまして、一応リクルートスーツはあるけど、向かう先はNPOのアルバイトでした。NPOを二つ掛け持ちして、「自分は本当に何がしたいのだろう」と考えた時に、「どうしても難民支援がしたい」と思ったんです。

難民支援協会の設立に関わってきたので、どこかに就職はするけれども、難民支援のNGOで働けるように自分で力をつけていこうと思い、企業にも就職したという感じでした。

──石川さんはなぜ日本へ来る難民の支援活動をしているのでしょうか。

もちろん国際的な支援にも関心があり、海外で難民支援をする団体にも理事として関わらせてもらっています。いまの活動は日本に逃れてきた難民の人たちに焦点を当てていますが、「海外だから」「国内だから」という違いはなく、国を逃れざるを得なかった人たちを支援するという本質は変わりません。

ただ、いま日本に暮らして社会を構成している当事者として日本の社会課題に取り組むのは、日本にいる自分だからこそできることです。日本社会の排他性を難民の人たちを通じて見ていて、「本当にこんな社会でいいのか」と憤ることもあります。自分が暮らすこの社会をどうしていきたいのか、こういう社会であってほしい、という思いを実現するために、日本での支援活動に関わっています。

収録には、大学3年生の石岡紗織さんが聞き手として参加=東京都中央区、編集部撮影

難民の人たちを取り巻く状況をどう変えたいかが大事

──NGO/NPOの仕事に興味があるのですが、少し遠い存在のように思います。実際、どんな人材が求められているのでしょうか。

国際機関では新卒採用がほぼないのですが、新卒だから入れないということはありません。ただ、一般企業の新卒採用のように1年前から採用を始めるということはなく、基本は欠員補充です。もちろんそうでないNGO/NPOも増えてきていると思います。

私たちは「これを解決したい」という社会課題や社会に対する姿勢を大切にしているので、例えば英語ができる、英語+もう1言語できると、難民の方には様々な国の方がいるのでありがたいということはあります。また、経理や広報、政策提言、支援の現場などで必要とされるスキルが違うので、それを持っているかどうかということと、その素養があり、それを伸ばしていこうと思っているかどうかが大切かなと思います。

そして何よりも難民の人たちを取り巻く社会的な状況をどういうふうに捉え、どういうふうに変えたいと思っているかということが大事だと思っています。

──NGOの立場だからこそできる仕事はどんなことがありますか。

やはり現場にいるということだと思います。去年はコロナによる国境を越えた人の移動の規制がなくなり、先進国の難民申請者が急増しました。日本もすごく増えて、1万4千人近くの方が申請しました。

私たちの事務所にも連日多くの方がきて、それまでは男性が単身で家族を養うために来ていたりしましたが、最近は多様化してきて、妊娠している方もいたりと、私たちの事務所で対応できる限界のところまできていました。

それでも工夫をして、みなさんに支援を呼びかけたりしながら、なんとか乗り越えて対応しました。やはり現場で人に向き合っているからこそ、その中で創意工夫し、現場でできるだけ多くの人たちに支援を届けるのが私たちのやっていることだと改めて思いました。

目の前に支援を求めている人たちがいて、その人たちに対して私たちが支援の中で何ができるのか。現場で悩みながら考え抜くのがNGOの支援だと思っています。(続きはPodcast本編で。Spotify / Apple Podcast

石川えりさん

1976年生まれ。上智大学卒。1994年のルワンダにおける内戦を機に難民問題への関心を深め、大学在学中から難民支援協会(JAR)立ち上げに参加。大学卒業後、企業勤務を経て2001年にJARへ入職。直後からアフガニスタン難民への支援を担当、日本初の難民認定関連法改正に携わり、クルド難民国連大学前座り込み・同難民退去強制の際にも関係者間の調整を行った。2008年1月から事務局長となり2度の産休をはさみながら活動。2014年12月に代表理事就任。第5回日中韓次世代リーダーズフォーラム、第2回日韓未来対話にそれぞれ市民セクターから参加。共著として、「支援者のための難民保護講座」(現代人文社)、「外国人法とローヤリング」(学陽書房)、「難民・強制移動研究のフロンティア」(現代人文社)ほか。2児の母。上智大学非常勤講師。一橋大学国際・公共政策大学院非常勤講師。