グローバルヘルスやジェンダー問題、人権問題や食料不安。世界にも、日本にも、これらの課題を解決すべく活動している人がいます。NGOをはじめとする「現場で働く人」をゲストに迎えるポッドキャスト「地球で働く!」。第16回では、国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンのアドボカシーグループリーダーである長島美紀さんに生理の貧困問題についてお話しいただきました。ポッドキャスト本編はApple PodcastSpotifyで配信しています。

「地球で働く!」第16回では、前回に引き続き、国際NGOプラン・インターナショナル・ジャパンのアドボカシーグループリーダーである長島美紀さんをゲストにお招きしました。

収録には、with Planetの藤谷健シニアエディターとともに大学3年生の入口侑可さんが参加。日本、そして世界で問題視される「生理の貧困」問題などについてお話を聞きました。この記事では本編の一部を、読みやすいように編集してお届けします。

収録に参加した大学3年生の入口侑可さん=東京都中央区、編集部撮影

女の子が「自分はリーダーになれる」と答える割合が低い日本

──長島さんが所属しているプラン・インターナショナルは、そもそもどのような組織なのでしょうか。

プラン・インターナショナルの創設は、80年以上前のイギリスにさかのぼります。現在は世界70カ国以上に事務所を構えて活動しています。当初は発展途上国の子どもに対する教育支援に関わっていましたが、その後、特に女の子の教育機会の格差に焦点を当てた活動を行うようになりました。日本国内でもジェンダー課題に取り組んでいます。

──日本国内では、どのような課題に着目しているのでしょうか。

例えば、「女の子のリーダーシップ」が挙げられます。プラン・インターナショナルは2019年、世界19カ国で女の子を対象にした調査を行いましたが、なかでも日本は「リーダーになりたい子」の割合がそれほど低くない一方で、「自分はリーダーになれると思う」「その能力がある」と答える割合がとにかく低かったのです。

これは他の18カ国に比べて突出した数字でした。さらに「長時間、男性よりも働かないと認めてもらえない」「性的なボディータッチなどを我慢しないといけない」という回答も多く、自身が実際にリーダーになっている女性の姿を想起できないという状態も報告されています。

私もこの調査を担当し、女性のリーダーシップに関する調査リポートの提言を、3年かけてまとめました。それ以外にも「生理の貧困」に関する調査を行っているほか、包括的性教育を巡る意識調査なども行っています。

──「生理の貧困」については私も関心があり、大学では生理用ナプキンを配布する活動に参加しています。

そもそも「生理の貧困」という言葉を使い始めたのは、実は私たちプラン・インターナショナルでした。イギリスで2018年に行った調査では「そもそもその生理について学んだことがない」という人がいたり、「自分が初めて生理になったときにすごく動揺してしまう」「ナプキンの購入をためらう」「ナプキンは人にもらう」という人がいたりすることがわかりました。

日本でもコロナ禍で「生理の貧困」が話題になりましたが、プラン・インターナショナル・ジャパンも日本での実情を調査しました。当時、実際にそのテーマに関する問い合わせも多かった印象があります。

──そうした調査が具体的なアクションにつながったことはありますか。

製作したリポートをさまざまな組織に対して資料として提供し、リサーチリポートとして使っていただくことがあります。間接的ではありますが、情報として活用いただくかたちでしょうか。

プラン・インターナショナル・ジャパンでアドボカシーグループリーダーを務める長島美紀さん=東京都中央区、編集部撮影

物事の根本的な要因を見定めるには

──研究、調査をして、提言する。そして最終的に何らかの形で政策として実現するのが理想のかたちだと思いますが、取り組む上で難しいことはありますか。

アドボカシーの活動方針として、「データベースでなければいけない」という点が挙げられます。つまり、きちんとしたエビデンスとデータの上で提言しなければ、ただの「言いっぱなし」になってしまうのです。

そのうえで、「何が最大のテーマなのかを決める」のは難しいですね。例えば「生理の貧困」についても、実際にリポートを作成する際に感じたのは、生理用品そのものはそこまで高価なわけではないということでした。問題はむしろ「知識の貧困」にあって、生理の問題に関する認識の低さや、性教育の問題、使い方の問題を提言する必要があるのです。

物事の根本的な要因が何なのかを見定めるのは、簡単なことではありません。困窮している人がいて、その人たちにナプキンを配れば解決なのかというと、そうでもない。

──何かを変えていこうとする人が、行政サイドにも必要ですよね。

そうですね。物事をすべて「貧富の問題」にしてしまえばわかりやすいかもしれませんが、私は教育の欠如や、「恥ずべきもの」「隠すべきもの」としてきた社会の歴史全体に問題があると思っています。

紛争地域でも、災害が起きた地域でも、生理に関する課題は問題として表出しづらいといえます。実際に世界全体をみるとアクセスの難しさは日本の比ではなく、「それがないと生活できない」というものへの理解の低さは世界共通なのでしょうね。(続きはPodcast本編で。Apple Podcast / Spotify

長島美紀さん

政治学博士。大学院で先進国の難民受け入れ政策を研究する傍ら、難民支援を行う国際機関やNGOにインターン、リサーチャーとして関わる。その後アフリカに関するキャンペーン活動やNGO、財団の運営、政策提言活動などに従事。SDGs市民社会ネットワーク(SDGsジャパン)では、普及啓発事業を担当。現在、認定NPO法人Malaria No More Japan理事、プラン・インターナショナル・ジャパン アドボカシーグループリーダーも務める。著書に「FGM(女性性器損傷)とジェンダーに基づく迫害概念をめぐる諸課題―フェミニズム国際法の視点からの一考察」(早稲田大学出版部)。