「最初の一歩」の踏み出し方 伊能まゆさんがベトナムで活動するまで
「地球のためにできること」に従事する方々にお話を聞くwith Planetポッドキャスト第20回。前回に続き、特定非営利活動法人「Seed to Table」の伊能まゆ代表がゲストです。

「地球のためにできること」に従事する方々にお話を聞くwith Planetポッドキャスト第20回。前回に続き、特定非営利活動法人「Seed to Table」の伊能まゆ代表がゲストです。
グローバルヘルスやジェンダー問題、人権問題や食料不安。世界にも、日本にも、これらの課題を解決すべく活動している人がいます。NGOをはじめとする「現場で働く人」をゲストに迎えるポッドキャスト「地球で働く!」。第20回では前回に続き、特定非営利活動法人「Seed to Table」の代表である伊能まゆさんに、「NGO活動」という自身のキャリアについてお話を伺いました。ポッドキャスト本編はApple Podcast、Spotifyで配信しています。
配信済みの前エピソードでは、ベトナムでの国際協力や現地の人々との協力の難しさ、そしてその中での達成感や困難について話してくださった特定非営利活動法人「Seed to Table」代表、伊能まゆさん。収録に参加した大学生の亀田青空さんがちょうどベトナム渡航を控えていたこともあり、ベトナムの社会文化の特徴や、日本との価値観の違いの話題でも盛り上がりました。
後編となる今エピソードでは、伊能さんがNGO活動に踏み出すことになった「第一歩」について、お伺いしています。一般企業に勤めるのとは違い、NGOへのエントリーは「就活」情報サイトですぐ見つけられるわけではありません。地球のために、社会貢献のために働きたいと思ったとき、いつ、どのように飛び込めばいいか、亀田さんとwith Planetの藤谷健シニアエディターが聞きました。
この記事では本編の一部を、読みやすいように編集してお届けします。
──国際支援や国際協力に関連する仕事に就こうとする場合、その最初の一歩がすごく大事だと聞くことがあります。さまざまな団体が門戸を開いているとは思うのですが、多くの場合、実務経験が必要とされていて、その実務経験はいったいどこで積めばいいのかと途方に暮れてしまいます。伊能さんの場合、その「最初の一歩」は何だったのですか?
ある日本の団体のために「ベトナム現地の調査員」というかたちでお手伝いを始めたのがきっかけでした。ありがたいことに、私はベトナム語をある程度話せたので、現地の方と直接やりとりができたのです。そういう経験をさせていただいたのが大きかったですね。
そこから始まり、ボランティアとして、大学によるベトナム農村での調査に調査員として同行したり、補助要員として通訳に入ったり、ベトナム語の資料を翻訳したり……。そういったことが一つずつ積み重なっていったという感じでしょうか。
疑問に思われる通り、若い人たちに国際協力の現場に入って欲しいと言う一方で、実務経験がないと受け入れられないというのは矛盾していますよね。とはいえ、やはり多くの団体が即戦力を欲しがっているのは否めません。
──「最初の一歩」につながる機会を引き寄せるためには、どんなことをしたらいいですか?
私がラッキーだったのは、ちょうどベトナム政府が門戸を開いて、海外のNGOに入ってもらおうとしている時期だったこと。当時、多くのNGOがベトナムに入ろうとする一方で、ベトナム語ができる人はさほど多くはなかったのです。
今言えるのは、ベトナムに限らずさまざまな地域に行き、そこでのNGO活動を少しでも手伝ってみればいいということです。インターンシップも用意されているようですから、機会があって状況が許すのであれば積極的に関わってみてはどうでしょうか。
──なるほど!
興味のあるNGO活動があれば、海外に出る前に、日本国内でやっておくと「肥やし」になるのではないかと思います。
──伊能さんは今、ベトナムで農業に関わる活動に携わっていますが、そうやって一つの国、一つの産業に絞る理由が何かあったのですか?
私がベトナム社会に入っていった当時は、申し上げた通り、さまざまなNGOがベトナムに入った時期で、とにかく人手が足りていませんでした。色々なところでお手伝いをするなかで、農村や農業そのもの、あるいは農家の皆さんに対して関心を寄せる機会に出会えました。
この人たちの暮らしをよくしていくには、この人たちが幸せに暮らしていくには、何ができるのかと考えていたら、やはり彼ら、彼女らの生業たる農業のことをちゃんと勉強しないといけないなと思い至るわけです。それで、まず農家の皆さんからいろいろ教えていただくことから始まって……。
──その場のご縁、その場のチャンスを大事にして、どんどん受け入れていった。
ええ。ここまでお話しして、聞いていただいている皆さんのキャリアが変な方向に行かなきゃいいのですが(笑)。
私自身は行き当たりばったりではありますが、岐路に立ったとき、自分が大事だと思える方向を選んできた結果、今に至っています。「何歳になったときにはこうなっていなきゃ」という発想をもてていたら、ちょっと違う人生の過ごし方になっていたのかもしれません。でも、私はそうではなく、今やるべきこと、大事にするべきことが何かという視点で選んできた結果が今につながっているという感じですね。(続きはPodcast本編で。Apple Podcast / Spotify)
伊能まゆさん
特定非営利活動法人Seed to Table代表。1997年にベトナム・ハノイに留学。日本のNGOに勤めた後、2009年にSeed to Tableを設立。ベトナム北部の山岳地域やメコンデルタで農家と共に在来種の保全、環境保全型農業の推進、農産物加工と市場開拓、子供たちへの環境教育などに取り組んでいる。気候変動の影響が農業、農村、農家に顕著にみられるようになり、悩める日々を送っている。