日本企業の技術も活用 健康課題に取り組むユニットエイド幹部が来日
保健医療分野の課題に取り組む世界保健機関(WHO)傘下の組織「ユニットエイド(Unitaid)」のテヌ・アバフィア事務次長が来日し、国会議員らと意見交換しました。

保健医療分野の課題に取り組む世界保健機関(WHO)傘下の組織「ユニットエイド(Unitaid)」のテヌ・アバフィア事務次長が来日し、国会議員らと意見交換しました。
世界保健機関(WHO)傘下の組織で、保健医療分野の課題に取り組む「ユニットエイド(Unitaid)」のテヌ・アバフィア事務次長がこのほど来日し、国会議員らと意見交換する会合が6月6日、東京・永田町であった。アバフィア氏は「今後ぜひ日本との関係を深めていきたい」と述べ、日本政府のグローバルヘルス分野への積極的な貢献を求めた。
会合はユニットエイドと、日本のNPO法人「日本医療政策機構」が共催。会合に先立ち、外務省の喜多洋輔・国際保健戦略官があいさつをし、「ユニットエイドのユニークな特徴の一つは、技術と国際保健を結びつけて支援をしていること。日本の技術の活用も含め、脆弱(ぜいじゃく)な状況にある方々をサポートしていくために努力していただいている。政府もしっかりと協力して国際貢献し、日本企業の貢献にも結びつけていきたい」と語った。
ユニットエイドは、低中所得国に高品質の医薬品などを手頃な価格で広く届けることを目的として2006年に設立された。HIV/エイズやマラリア、結核をはじめ、女性と子どもの健康などグローバルヘルス分野の様々な課題に取り組んでいる。アバフィア氏は会合で、「設立から19年が経つが、100以上の画期的な医療品などが導入され、ユニットエイドの支援による医療品を使用している人は年3.2億人に上る」と意義を強調した。
また、日本企業と連携した事例についても紹介。産業用ポンプや血液透析装置などを手がける「日機装」(本社・東京)との事業では、同社がケニアとタンザニアに液化酸素を製造する施設を設立する予定で、東アフリカでの医療用酸素の製造を3倍に増やし、酸素の価格を最大で27%削減することをめざしているという。この事業には日本の外務省が昨年3月、10億円をユニットエイドに拠出。ユニットエイドの担当者によると、2026年中には施設の稼働をめざしているという。アバフィア氏は「低中所得国の保健分野に関して、日本の民間企業とともに貢献できる具体的な実例の一つ」と語った。
医療用酸素は、呼吸器系疾患のほか、出産や手術時など、あらゆる医療現場で必要とされる。ユニットエイドによると、世界で急性呼吸器疾患で苦しむ5歳未満の子どもは年約1.2億人にのぼるとみられ、そのうち約100万人が死亡している。特に紛争地や難民キャンプ、被災地などの厳しい環境にいる子どもたちへの医療用酸素の供給が課題となっている。ユニットエイドの支援を受けた研究者が、電力を使わず持ち運びしやすい乳幼児向け酸素呼吸器を開発し、さらに多くの地域に広げていくため、日本政府は2024年度補正予算でも資金拠出を決定。南スーダンやコンゴ民主共和国、ケニア国内の難民キャンプなどへの供給を予定しているという。
出席した国会議員から「日本政府や国会議員に今後どのような期待をしているか」と問われたアバフィア氏は、「今後ぜひ日本との間で関係を深めていきたい。とりわけ日本の民間企業にもっと医療分野のイノベーションや、様々な医療ニーズへの対応に関わっていただきたい」と応じていた。