世界の健康のために日本は何ができる? Z世代が政治家に提言
世界の保健医療分野の課題に向き合う「グローバルヘルス」にまつわる政策提言をするイベント「Policy Pitch」があり、Z世代が政治家に直接訴えました。

世界の保健医療分野の課題に向き合う「グローバルヘルス」にまつわる政策提言をするイベント「Policy Pitch」があり、Z世代が政治家に直接訴えました。
マラリア、エイズ、結核の3大感染症をはじめ、ポリオや顧みられない熱帯病(NTDs)、母子保健、ワクチン接種の普及――。世界には、人々の命に関わる保健医療分野の課題が山積している。こうした課題に向き合う「グローバルヘルス」分野の政策提言をするイベントが5月27日、東京・永田町で開かれた。Z世代が直接、政治家たちに訴えたことは?
開かれたのは、Z世代が政策提言を行うイベント「Policy Pitch」。政策提言プラットフォームを提供する「PoliPoli」が主催し、この日はグローバルヘルス分野の政策提言がテーマだった。PoliPoliは2023年から、グローバルヘルスなどの地球規模の課題に取り組む若い世代の活動を支援する「Reach Out Project」を運営している。
イベントでは冒頭、PoliPoli代表の伊藤和真さんが「僕らの課題感としては、政治・行政が全ての課題を把握し、対応するのが難しい時代になっているということ。特にグローバルヘルス分野は、NGOやスタートアップの方々が現場で得た課題を元に、政府と一緒に(政策を)作っていくことが大事だと思っている」とあいさつした。
出席した加藤勝信・前厚生労働相も、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、こうあいさつした。「さまざまな感染症が、昨日地球の裏側で発症したと思ったら、我が国にすぐ感染が広がってくる。まさに『地球は一つ』という実態になっており、『国内』『国外』と言っていられない状況だ。国内がよければいい、ということではなく、海外も含めて公衆衛生水準をしっかりと高めていく。そのためにも、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)を推進している」
イベントにはスタートアップ企業や学生団体など計7グループが参加。出席した与野党の国会議員や官僚、専門家に対し、政策提言をした。
ドローンとAI(人工知能)技術で途上国の課題に取り組むスタートアップ企業「SORA Technology」は、西アフリカのガーナやシエラレオネなどで、マラリアなどの感染症を媒介する蚊を減らすためボウフラの駆除剤を効率的に散布する事業に取り組んでいる。
副CEOの梅田昌季さんは、グローバルヘルス分野でビジネスを展開していくにあたり、国際的なドナーや国際開発金融機関との連携や拠出拡大は重要だとした上で、「アフリカなどでは、予算をどう使っていくかの最終的な意思決定(への関与)は現地の保健省などが非常に強い。意思決定に入り込んでいく戦略立案が重要になってくる」と指摘。フランス政府の例として、フランス語圏のアフリカ諸国を対象に、グローバルファンドへの予算申請設計などの技術支援協力をしているとも紹介した。「日本がそうしたところにどうやって入っていけるかも課題ではないか」などと提言した。
医療系の学生らによる団体からは、母子保健のための仕組みを整えるための「母子手帳アプリ」の普及、途上国などでワクチン普及を進める国際組織「Gaviワクチンアライアンス」への資金拠出、根絶まで「あと一歩」とされるポリオ対策として5種混合ワクチンを広めることなどの提言があった。
出席した国会議員や専門家からは、提言された政策を進めていく際の課題や背景をたずねる声や、具体的な実証を求める声などが上がった。
顧みられない熱帯病(NTDs)について取り組む一般社団法人「NTDs Youthの会」代表の轟木亮太さんは、日本政府に対してNTDsを重点領域とし、制圧に向けて取り組むよう訴えた。これに対し、出席した小田原潔・元外務副大臣は「NTDsへの取り組みは費用対効果が大きい。全面的に応援したい」と応じていた。参加者たちは今後、議員や専門家たちからの指摘を踏まえ、提言の内容を具体化させていくという。