「責任ある企業活動」のためにできること UNDP佐藤暁子さんに聞く
「地球のためにできること」に従事する方々にお話を聞くwith Planetのポッドキャスト。第17回は、国連開発計画の「ビジネスと人権」リエゾンオフィサー、佐藤暁子さんです。

「地球のためにできること」に従事する方々にお話を聞くwith Planetのポッドキャスト。第17回は、国連開発計画の「ビジネスと人権」リエゾンオフィサー、佐藤暁子さんです。
グローバルヘルスやジェンダー問題、人権問題や食料不安。世界にも、日本にも、これらの課題を解決すべく活動している人がいます。NGOをはじめとする「現場で働く人」をゲストに迎えるポッドキャスト「地球で働く!」。第17回では、国連開発計画(UNDP)でビジネスと人権のリエゾンオフィサーを務める佐藤暁子さんに、ビジネスと人権の概念や、UNDPにおける自身の役割、企業の人権尊重の重要性などについてお話を伺いました。ポッドキャスト本編はApple Podcast、Spotifyで配信しています。
第17回でゲストにお迎えしたのは、国連開発計画(UNDP)でビジネスと人権のリエゾンオフィサーを務める佐藤暁子さん。
今回の収録には大学院生で、国際人権NGO「アムネスティ日本」でインターンをしている大澤彩さんが参加しました。ビジネスと人権の分野における弁護士の役割や、国際協力と専門職のキャリアを両立させる方法などを聞いています。この記事では本編の一部を、読みやすいように編集してお届けします。
──UNDPは国連にあるさまざまな機関の中でもとくに大きな機関だと思います。どのような組織なのでしょうか。
このポッドキャストをお聞きのみなさんは、いろいろな国連機関、例えばユニセフ(国連児童基金)やILO(国際労働機関)など、ご自身の関心のあるテーマの国連機関を見たり、聞いたりしたことがあるかもしれません。そうした中では、UNDPはあまりなじみがないのではないかと思います。
UNDPはその名の通り「開発計画」ですから、いわゆる「開発」といわれるテーマに関する人権や気候変動、ジェンダー問題や紛争まで、幅広く取り扱っています。
それぞれの分野に対して専門的なチームがいますが、例えばウクライナをはじめとした世界各地で起きている紛争をどうしたら予防できるのか、そして紛争後、どうしたら平和を構築できるのか考えながら、社会を改めてつくっていくことも活動のひとつです。
「誰一人取り残さない」という理念に向けて、それぞれ何を推し進めるべきなのか。それぞれの政府、あるいは市民社会といわれるNGOといったセクター、企業などが、どうしたらコラボレーションしてよりよい社会を目指していけるのか。そういったことの中心でうまくファシリテートしていくための組織としてUNDPは存在しています。
──佐藤さんは現在、バンコクのオフィスに勤めていらっしゃるんですよね。
そうですね。ただし、私の今いるポジションをもっと細かく説明すると、「ニューヨークの本部付」。担当しているプロジェクトの関係でバンコク滞在が最も適しているということで、バンコクが勤務地となっています。
──国連開発計画の掲げる「ビジネスと人権」とは、どのようなものでしょうか。
最近、いろいろなメディアで「ビジネスと人権」が取り上げられるようになっているので、聞いたことがあるかもしれません。「ビジネス」と「人権」という二つの言葉をシンプルに組み合わせたものですが、実はこの組み合わせがすごく画期的なのです。
というのも、かつて人権に対する取り組みは、基本的には「国がすべきもの」とされてきました。人権は私たちすべての人間の日常生活に関わるもので、それぞれの人に基本的な人権があるとされ、それを守るのが国の大切な役割だったわけです。
ただ、経済活動が国境を越えて広がっていくなかで、私たちの生活に影響を与える活動は国だけではなく、企業の活動がどんどん大きくなってきました。
企業の活動には、雇用というかたちで仕事をつくり、働くことで経済が回っていくというプラスの側面があります。一方で、企業活動の裏側でさまざまな労働力が搾取されることもあれば、資源を使いすぎてしまって地球が枯渇してしまう状況も問題視されてきました。「ビジネスと人権」というテーマにおいては、企業がどうやってより責任のある企業活動を行うことができるのかという議論が中心になっています。
──佐藤さんはいま、実際にどのようなプロジェクトに関わっているのですか。
大きな活動のひとつとしてはこの2年間、日本の企業のみなさんにこの「ビジネスと人権」についてよく知っていただくための、そして実際に企業として取り組んでいただくための基礎をつくる研修を行ってきました。プロジェクト自体は2022年の4月に始まり、いま3年目に入ります。日本の企業のみなさんにどういうふうに「ビジネスと人権」を企業として取り込んでいくのかをお話ししています。
さらにプロジェクトは日本だけではなく、世界の国々で行っています。他の国の同僚と一緒になって、よりよいプロジェクトの実施の仕方、あるいはそれぞれの国にいる日本企業にどうアプローチしていくのかをコーディネートしながらプロジェクトを運営していくのも、わたしの役割のひとつです。(続きはPodcast本編で。Apple Podcast / Spotify)
佐藤暁子さん
国連開発計画(UNDP)ビジネスと人権 リエゾンオフィサー。弁護士。上智大学法学部国際関係法学科卒業、一橋大学法科大学院修了。International Institute of Social Studies(オランダ・ハーグ)開発学修士号(人権専攻)。企業に対する人権方針、人権デューデリジェンス(適正評価)のアドバイスや、ステークホルダーエンゲージメントのコーディネートのほか、NGOとしての政策提言などを通じて、「ビジネスと人権」の促進に取り組んでいる。