世界の1.2億人が、故郷を追われている 「強制移動」過去最多に
6月20日は「世界難民の日」。紛争や迫害などによって多くの人が家や故郷を追われています。世界では何が起きているのか、with Planetの目線で伝えます。

6月20日は「世界難民の日」。紛争や迫害などによって多くの人が家や故郷を追われています。世界では何が起きているのか、with Planetの目線で伝えます。
6月20日は「世界難民の日」。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、難民の保護と支援に対する世界的な関心を高め、国連機関やNGOによる活動に理解と支援を深める日にするため、制定されたといいます。世界で故郷を追われる人が過去最多の約1.2億人となる中、現場で何が起きているのか、報告書の内容とともに、with Planetに掲載された記事をご紹介しながら考えます。
UNHCRは、紛争や迫害などによって家や故郷を追われた人たちが、2024年4月末までに世界で過去最多の約1億2千万人に達した、と6月13日に発表した。紛争などによって住まいを追われる「強制移動」に関する2023年の報告書では、2023年末時点で、強制移動を余儀なくされた人は約1億1730万人にのぼり、前年比8%増(880万人増)だった。世界の人口の1.5%にあたるといい、過去12年間にわたって前年比で増加し続けているという。
背景には、2023年に新たに勃発した紛争や、長期化した危機が解決にいたっていないことなどがあると分析。特に2023年4月に国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」が衝突して以降、紛争が続くスーダンについては、「強制移動の増加に大きく影響している」とし、2023年末時点で故郷を追われたスーダン人は計1080万人に及ぶという。
国境なき医師団の看護師、佐藤太一郎さんは2024年1~4月、スーダンで医療支援活動に従事した。with Planetで5月31日に配信したコラムで、「僕が現地に入った時点で、医療レベルはかなり悲惨だった」とつづった。ある病院では50人を超える職員がなくなり、生き残った職員のほとんどが隣国に逃れた。また、ある病院では、医薬品や医療機器のほとんどが盗まれていた、と伝えた。
国軍と武装勢力の戦闘が長期化するミャンマー。報告書によると、2023年に130万人以上が国内での避難を余儀なくされた。さらに130万人のミャンマーからの難民と亡命希望者が他国に逃れ、100万人近くはロヒンギャ難民だという。
ジャーナリストの舟越美夏さんは、ミャンマー国軍の軍曹だった男性を取材。国軍のクーデターに反発して軍を離脱し、タイ北西部の町で家族と暮らしている。with Planetで1月29日に配信したルポで、祖国に戻るのは「本当の平和が訪れた時」だという男性の思いを伝えた。
報告書によると、1090万人近くのアフガニスタン人が国内外で避難生活を続けており、そのほとんどが国内または近隣諸国で暮らしているという。2023年、世界で報告されたアフガニスタン難民の数は74万1400人増え、640万人に達した。報告書は、「アフガニスタンでは人口のほぼ半数が深刻な食料不安に直面し、数百万人が家を失ったままであるため、持続可能な帰還の機会はいまもなお限られている」と指摘している。
2021年8月、イスラム主義勢力タリバンが首都カブールを制圧。その約1年後に家族とともに国を出て、オーストラリアに避難した女性を、ジャーナリストの舟越さんが取材。宗教音楽以外を許さないタリバンが、音楽家の弟の楽器を破壊したことがきっかけだった。with Planetで1月29日に配信したルポでは、オーストラリアで夢を持ちながら働く女性の姿を伝えた。
ジャーナリストの村山祐介さんは2023年5月、アフリカから地中海を越えて欧州を目指す移民・難民の状況を取材した。世界で最も危険な「死のルート」と呼ばれる地中海中央部で、多くの人が死亡または行方不明になっており、まさに「命がけ」で自国から逃れようとする人々の実態を伝えた。チュニジアからサハラ以南出身者の多くが脱出を試みており、その理由について、サハラ以南からの非正規移民への憎悪や一斉摘発などがある、と伝えている。
また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の推計によると、2023年10月からイスラエルによる侵攻が続くパレスチナ自治区ガザでは、2023年末時点で170万人(人口の75%)近くが避難を強いられたという。
フィリッポ・グランディ国連難民高等弁務官は「これらの厳しい現実、数字の増加の裏側には、数えきれないほどの悲劇があります。その苦しみを前に、国際社会は立ち上がり、強制移動の根本的原因に緊急に取り組まなければなりません」と訴えている。